2 Aug – 14 Sep 2019

鈴木孝幸/Takayuki Suzuki
歩行の彫刻/place / face

13:00-18:00
日・月・祝日休
Closed on Sun, Mon and Holidays

Opening reception / 18:00 - 20:00, 2 Aug 2019

夏季休廊/8月11日[日] - 8月19日[月]

かつて彼は、砂漠や荒野を歩行した。そしてそれは、線として可視化された。
イギリスの線、富士山の線、アイルランド、ヒマラヤ、アラスカ、アンデス、アフリカ…

歩行の中で手に取られた木の枝や石や土は、形や状況を少しだけ変える。
そしてそれらは、写真や言葉とともに私たちの前に提示された。
そこには、歩行の主体による皮膚感覚とそれを俯瞰する視点が、反発しあうことなく美しく同居している。

1967年、彼が「歩行による線」を発表した頃、地球科学の分野ではプレートテクトニクス理論が登場していた。
地面がマントルの対流に乗ってゆっくりと動き続けている。
プレート同士がぶつかり、そこにひずみができる。
地殻の変動を誘発し、形成される曲線や凹凸。
人から見える景色もまた、大きく変わっていった。

それから50年余り。
景色は変わり続けている。
歩行の主体による視点と俯瞰した視点だけでは足りないくらい、さまざまな角度からものを見られるようになった。
ものとものとの関係の複雑さは、少しずつ明らかになってきた。

地面は固く、柔らかく、上も下も横も斜めもある。
そして、崩れてしまうことも。
けれども、崩れた地面はなおすことでまた、歩行の場所となる。
立っている自分を眺めながら、地面の凹凸を肌で感じながら、周囲の変化と歩調を合わせていく。
正面も中心もない、歩行の彫刻。

鈴木孝幸