15 Nov – 20 Dec 2025

作間敏宏/Toshihiro Sakuma
接着/交換 / ADHESION/REPLACEMENT

13:00-18:00
日・月・祝日休廊
Closed on Sun, Mon and Holidays

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連作『接着/交換』のこと

美術やデザインの学校では造形のトレーニングとしてユニット構成の課題が出ることがあります。単一(=ユニット)の形体をいくつも複製して、それだけで平面や立体の構成をめざすわけです。あらかじめゴールを決めて、(たとえばタイルで動物の絵を、レゴブロックで家や車を作るように)ユニットを服従的に考えることも、ユニットの形体的な特徴が自律的に育つなりゆきにまかせて、半ばオートマチックにすすめることもできます。いずれにせよ複数のユニットが構成されると新たなかたちと意味がうまれます。

僕の制作には、そうしたユニット構成の考え方や手続きがたびたびあらわれます。電球も人名も写真も、僕の作品では無数のユニットとして扱われます。角を丸め無数の孔をあけたオーガニックな正六角形の板を、カビが繁殖するように空間の隅に連鎖させた前回のインスタレーション作品「接着/交換」*は、チャールズ&レイ・イームズが考案した遊具(ビルダーカード)や学校で習う分子構造モデルに誘導されて着想した、まさにユニット構成でした。大量に複製された疑似正六角形の板状のユニットは、同形同寸でどれも〈交換〉が可能であり、結合の手である6方向のスリットで多方向に〈接着〉し続けられます。そのことは、形体イメージ以上に、細胞が増殖し生体組織を構成するメカニズムをほのめかしていたはずです。

レンガというのも、人間が家を作るユニットだといえます。今回、一段掘りさげられた床に設置したのはレンガサイズの蜜蝋ブロックです。これまでも、ミツバチが巣をつくる自前の建材といえる蜜蝋を、人間が家をつくる建材であるレンガに重ねて、蜜蝋レンガをユニットにした制作をしていましたが、今回はそれに人名の刻印を施して並置しました。家は家族ひとりひとりを、ミツバチの巣はその一匹一匹を、それぞれ〈接着〉しながら〈交換〉し続ける装置といえます。さらにそれらを見下ろす位置にも、レンガサイズのプラスチックケースを積んだタワーを据えました。ユニットであるプラスチックケースにはガーゼと灰が内蔵されており、タワーを、〈接着〉と〈交換〉が幾重にも重層する集合住宅になぞらえています。

前回のテキストに書いたように、帰属する集合に〈接着〉されいずれ新しいメンバーに〈交換〉されるのが〈いのち〉が生き延びる仕組みではないか、というのが連作『接着/交換』の問いの中核ですが、その問いのもとで制作する作品が、〈接着〉と〈交換〉を要件とするユニット構成の考え方や手続きとパラレルなのは面白いと思います。さまざまな美術の〈イズム〉の影響について考えないのではありませんが、ありていに言えば、こうした制作の傾向は僕のネイティヴな習慣だという気がしています。

作間敏宏

*文中にあるGallery HAMでの2024年「接着/交換」の作品写真とテキストはこちら
(作間敏宏の参考資料☞https://sakumatoshihiro.myportfolio.com/adhesion-replacement)