14 May – 25 Jun 2022
鈴木孝幸/Takayuki Suzuki
“マリアナでつまずく” – place / fossa –
13:00-18:00
日・月・祝日休廊
※ ご来廊の際には事前に電話かメールにてご予約をお願い致します。
※ 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、オープニングレセプションは開催致しません。
※ 2022年6月11日(土)は臨時休廊致します。
Statement:
マリアナでつまずく
幼なじみは言いました。
「孝幸、夜中ちゃちゃ渕に鰻釣りにいかん?」
孝幸君は答えました。
「また今度」
インドア派の孝幸君がその後釣りに行くことはありませんでした。
行かなかったがために、ちゃちゃ淵 の深さも色も、その目で見て感じることはありませんでしたが、近所の川に鰻がいるかもしれないこと だけは分かりました。
2009 年、その日本の河川にも遡上してきている鰻が、遠く離れたマリアナ海溝の北側海域(マリアナ諸 島西方海域)で産卵されていることを、東京大学の研究チームが
つきとめました(同海域で 31 個のウナ ギの卵の採取に成功しました)。
距離にして約 3,000km。生き物としての移動距離もさることながら、確かにつながっているその場所の 存在に、ハッとしたことを覚えています。
マリアナ海溝とは、 大体あのへん、と分かる方もいれば、さっぱり分からない方もいるのではないでしょうか。
地図を開いてみると、千葉県沖から海溝を辿って南下し、小笠原海溝を通過してさらに南下していくと、 マリアナ海溝にたどり着きます。
(反対に千葉県沖から北上していけば、その海溝の線は日本列島を西側に抱えながら、オホーツク海、ベ ーリング海を経て、アラスカ、北アメリカ大陸へとつながっていきます。)
陸に暮らす私たちからすればその大地の連なりは捉えがたいのですが、確かにつながっている、地図に 見る俯瞰は、そんなことを示しているようです。
ただし、そのつながりを肌で感じることは難しいのではないでしょうか。そこには常に、質量の欠落が 伴っているようにも感じられます。
つながっていることを知っていて、確かにこの目で見て確認している。
そして、そこにある溝がプレー ト同士の衝突によりできたこと、その少し先には火山などが形成され、人の住める場所ができていくと いうことも。ただ、そこで起きていることについては、
何も知らない、想像の外側に存在しているよ うです。
鰻の稚魚は海流にのって、日本や台湾、中国、韓国等の川にたどり着き、そこで成長するそうです。
決してその全体が見えているわけではないけれど、その場所のつながりを知っている、イメージはなくとも、この広い土地全体を確かに感じている、そんな風にも捉えられます。
見えることと感じられること。
マリアナ海溝、2つのプレートがぶつかる場所、その境界。
離れていても、確かにつながっている場所。
その地図上で見る「線」の中に「面」を見るように、質量を感じるように、離れた場所から想像して、
マリアナでつまずく。