微かに動く風のよう。遠く唸りに動かされ。いまは輝くものたちも。いづれは天の影になる。
何か茫漠としたものが、あの東日本大震災によって押し流され、光る大気に被われた。
そのような中、ただそのものを受け入れるしかなかった。
風を追うわけでもなく、光を追うわけでもない。ただその林檎の存在に惹かれ、
覆い尽くされながら見つめた、この数年間の作品を展示する。
その時々の空気を吸収しながらも、それでもなお植物は、画面を越えていく。
これは単なる、独唱かもしれない。
けれどもその旋律は、再び現れる影もまた、光に変えられるのかもしれない。

先間康博