そこには水がある
そこには土があり、石があり、樹の枝もある

全てのものは上から下へと集まり、ここからそこへと流れていく
流れてはとどまり、現れては消える
その際限ない動きの中に、私もまた巻きこまれていく

川原に降りるということ
何かを手に取るということ
それは、流れていくことであり、流されていくことでもある
そこに足を運び、そこに触れて、その流れを肌で感じる
イメージも何もない、世界の広がり
決して見ることのできない本質
それらは、私の指の先にのみ存在する

川には水がある
川には土があり、石があり、樹の枝もある
陶器のかけら、プラスチックのかけら
コンクリートや鉄くず、着古された衣類や靴
全ては流され、川へと集まってくる
渇水の時もあれば、氾濫することもある
澄んでいることもあれば、濁ることもある
その全てが川であり、その全てが流れている
川は、私の指の先からつくられる

鈴木孝幸 2012.10.2